『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』読書案内

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

著者

ピーター・ティール

ピーター・アンドレアス・ティール(Peter Andreas Thiel、1967年10月11日 - )は、アメリカ合衆国の起業家、投資家。PayPal(ペイパル)の創業者。シリコンバレーで大きな影響力を持つ「ペイパル・マフィア」の中では、「ドン」と呼ばれている。アメリカのリバタリアンドナルド・トランプ支持者。

出典: Wikipedia

感想

引用の出典: ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ビジネスに同じ瞬間は二度とない。次のビル・ゲイツがオペレーティング・システムを開発することはない。次のラリー・ペイジセルゲイ・ブリン検索エンジンを作ることもないはずだ。次のマーク・ザッカーバーグソーシャル・ネットワークをきずくこともないだろう。彼らをコピーしているようなら、君は彼らから何も学んでいないことになる。

しびれる!

これはこの本の最初の段落。

本書のタイトル「ゼロトゥーワン」を別の言葉で表現したものだろう。

日本のビジネスシーンを見てると、既存の成功例のコピーばかりで嫌になるよね。

未来がなぜ特別で大切なのかといえば、それが「まだ訪れていない」からではなく、その時に「世界が今と違う姿になっている」からだ。

彼の言う未来とは、単純に時間的に先のことではなく、今の世界と異なっていることに重点を置いている。

その異なる世界を想像し、創造しなければならない、と。

より良い世界を作ってきたのは、使命感で結ばれた一握りの人たちだった。

いいこと言うね。

大組織でつるまずに少人数で活動している俺みたいな人に勇気をくれる。

スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ

本当に言葉に力がある。

スタートアップの代表は励まされるだろう。

航空会社はお互いがライバルだけれど、グーグルにはそうした相手がいない。

彼は「競争するな」としきりに主張している。

相手がいないようなビジネスをしてしまえば利益率は高いぞ、と。

資本主義と競争は対極にある。

常識とは正反対のことを言っているようだけど、説得力がある。

稼ぐには資本の蓄積が欠かせないけど、競争が資本を細らせるからだ。

競争とはイデオロギーなのだ。

競争が良いことだと刷り込まれているだけだと。

日本の教育もそうだよね。

小学校でも年末の歌番組でもなぜか紅白に分かれて戦うよね。

ただ運動したり、歌ったりすればいいのにさ。

独占への近道は存在しない。

手厳しい。

つまり、最初から独占を狙ってビジネスを立ち上げることはほとんど不可能。

でも、立ち上げたビジネスについて常に独占でありうるビジネスかチェックすることは可能と言っている。

それが以下の4つの視点。

  1. プロプライエタリ・テクノロジー
  2. ネットワーク効果
  3. 規模の経済
  4. ブランド

まあこれがあれば苦労しないよね。。。

二番手よりも少なくとも10倍は優れていなければならない。

独占するためには、効率、使い勝手、デザインなどをライバルを10倍引き離す必要がある。

どんなスタートアップも非常に小さな市場から始めるべきだ。

リスクの最小化の意味でも。

僕達が住んでいるのは正規分布の世界じゃない。僕たちはべき乗則のもとに生きているのだ。

これは日常を生きているとついつい忘れてしまう事実だね。

部屋の壁にでも貼っておきたい。

簡単に言えば、ほんの少しの努力の差が結果では天と地の差になるということ。

人と人との競争でいえば、2位は撤退を余儀なくされるほど1位との差がある。

富士山の次に高い日本の山をほとんどの人が知らないでしょう?

努力で言えば、努力した分だけ成果が増えていくのが正規分布の世界。

でも現実は、8割の努力はたった2割の成果にしか繋がらない。

だから多くの人は8割に達する前に諦めてしまう。

でも8割の努力から成果が急に8割まで跳ね上がる瞬間が訪れる。

学校ではそれと反対のことを教えている。学校教育は画一的に一般教養を受け渡すだけだ。アメリカの教育制度を通過すると、べき乗則で考えることができなくなる。

学校で成績がいい優等生というのは自分というリソースをすべての科目に均等に振り分ける。

つまり、正規分布の世界では優れているが、べき乗則の世界ではほぼ底辺に近いということだ。

社会では全く価値がない知識であるはずだ。

「どうしていまだにみんな学ぶのか?」

それは国のお墨付きとして「資格」が与えられるからだ。

大卒資格や国家資格など。

国が滅んだらそれらの知識の価値は吹っ飛ぶだろう。

これが俺が新しい学校を作ろうといている理由の1つでもある。

つまり国家なんかに担保してもらわなくても価値のある教育だ。

社会では、何かに突き抜けていなければ価値はないんだ。

なぜ僕たちの社会は、知られざる真実なんて残っていないと思い込むようになったのだろう?

この問いはかなり重要だ。

今の日本人が感じている閉塞感の原因の1つでもあると思うからだ。

ITとインターネットの普及によって、調べれば一瞬で何でも分かってしまう(気がする)。

遠い存在だと思っていた有名人が実は同じような人間だったのだとわかる(気がする)。

そうして何でも分かったつもりになってしまって、行動する価値を感じなくなってしまう。

でも、実際は違う。

世界はこれまでの同じ速度で変化し続け、同じ速度で未知のものが暴かれていく。

いつの時代もそうだった。

多くの人は今のルールが絶対的だと思いこんでいて、過去が今と違ったことも未来が今と違うことも理解しない。

だから新しいものがはやると、古い価値観の人は「低俗な」コンテンツだという。

あの頃は良かったとか、俺達の若い頃は、とか言う。

世界は大きすぎて、ひとりの力では何もできないと感じてしまうのだ。

これは現代の無力感を感じている若者の多くを代弁しているだろう。

世界が繋がってみんなの活動が見えすぎて、自分よりももっと賢い人達が未来を変えてくれると思い込む。

自分はせいぜいフォローするしかできないと。

でも実際は違う。

世界を変えてきたのは賢い人ではなく、何かに没頭する人、人生でそれしかしないというくらいハマった人だった。

人々があまり語ろうとしないことは何か?禁忌やタブーはなんだろう?

これは彼が未来を想像する上での鍵としている質問だ。

CEOの給料が少なければ少ないほど、会社はうまくいく。

なるほど!

はっきり言われると気が引き締まる。

「俺が一番頑張ってるんだから一番もらって当然だろ」

というような空気感を出している人間には誰もついてこないだろう。

どうしても報酬が欲しい場合でも、スタートアップを運営したという経験そのものが後ほど大きな価値になることを思い出すべきだ。

周りのメンバーは必ずしもそうとは限らない。

だからメンバーのほうがむしろ金銭的な報酬は高くてもいいだろう。

企業にとって文化とは持つものじゃない。企業そのものが文化だ。

大衆の耳目を集めるような派手な福利厚生や奇抜なオフィスを批判しての言葉。

多くのスタートアップが企業文化の本質とはかけ離れたところで差別化したがるのは悪い傾向だ。

時間がいちばん大切な資産なのに、ずっと一緒にいたいと思えない人たちのためにそれを使うのはおかしい。

嫌な人と働くのは最も避けるべき事態だ。

これは人を採用をする基準に俺も使っている。

いい答えは大まかに二つに分類される。ひとつは君の会社の使命について、もうひとつはチームについてだ。

これは新しいメンバーを募集する時の売り文句についてだ。

  • 会社の使命に共感してくれる
  • メンバーと一緒に働きたいと思ってくれる

人でないとダメだと。

報酬や解決する社会問題が目当てのメンバーは合わない可能性が高いからダメだ。

スタートアップでは、中の全員がそれぞれまったく違う仕事で際立たなければならない。

これはスタートアップに限らず、これからの時代の小規模なチームでは当てはまるだろう。

シリコンバレーのおたくたちは、広告やマーケティングやセールスに懐疑的だ。というのも、それが薄っぺらで不合理に見えるからだ。

エンジニアとは得てしてこういう考えをもっている生き物だ。

頭のいい人と言われる人は少なからず思っているだろう。

でも商品や技術と同じくらいに、それらをどう見せるかどう売るかは重要なのだ。

最良のビジネスは見過ごされがちで、たいていは大勢の人が手放しで称賛するようなものじゃない。誰も解決しようと思わないような問題こそ、一番取り組む価値がある。

これはこれから個人として生きていく人にも当てはまる。

誰からも理解されず諦めようとしたその先に未来がある。

社会の理解と称賛が待っている。

単なる漸進主義を超えて会社を導くことのできる非凡な人物を、僕達は必要としている。

ありがたいお言葉。

今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来をつくること ー つまりゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。

本書の最後の段落だ。

やはり最初と最後は文章に気合が入っている。

かっこいい!

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか